アリスの創作広場

小説家志望のアリスです。作品はフィクションです。実在の個人、団体、法令、法則とは一切関係ありません。

JK部 02

 靴を履き替え、校舎を出る。校庭では運動部が練習中だ。スタスタと歩く浅川を先頭に、自転車置き場をスルーし、正門に向かう。 

 

 昔は正門にはカードリーダーがあり、出入りする人を記録していた。今は自動顔認証システムに置き換わり、手ぶらで通過できる。便利になったものだ。そのぶんだけ逆に失うものもあるが、それについて語ると長くなるので、今はやめよう。

 それに、こういう社会になったおかげで、俺の居場所も作りやすくなったわけだし、文句を言うような筋合いではない。

 

 「ところでさ、浅川。山科さんの家ってどこだか知ってるの?」

 「知らないわよ」

 「おいおい」

 「本人がいるんだもの、教えてもらえばいいでしょ」

 「それはそうだけど、歩きなのか、自転車なのか、バスなのかくらいはわからないと困るんだけど」

 「言われてみればそうね」

 「俺は自転車で来てるけど、山科さんは?」

 「近いので歩きです。天気が悪いときはバスを使う時もあります」

 「浅川は歩きだよな」

 「そうよ」

 ということは、自転車は後で取りに来たほうがいいな。

 「残念だったわね。山科さんと二人乗りができなくて」

 「三人乗りなら・・・。いや、やめておく」

 想像したくなかった。

 

 浅川と山科さんが並んで話をし、俺は二人の後をついていく。浅川が質問をして、山科さんがそれに答えている感じだ。いろいろと聞き出してくれているのかもしれない。あるいは、単に話を楽しんでいるだけかもしれないが。

 バス通りを離れ、川沿いの遊歩道を歩く。車の通れない道で、防犯カメラはない。

 後ろから二人を眺めていると、さっき知り合ったばかりとは思えない。もう打ち解けているようだ。女子とは不思議な生き物だ。

 楽しそうに話を続ける浅川もめずらしいし、邪魔をせずにいることにした。

 

 徒歩で通学しているから、近いのかと思ったが、まだ到着する気配がない。川沿いの遊歩道で、民家もまばらだ。15分くらい歩いたところで、聞いてみた。

 「山科さんの家って、思ったより遠いんだね」

 「もうすぐです。半分以上来ました」

 「まだ半分か」

 「運動不足の誰かさんには、この距離はきついのね」

 「すみません、最短距離ならもう着くんですけど、天気がいいので、少し景色の良い道をきちゃいました」

 景色が良いのはいいんだけど、ちょっ遠回りしすぎじゃないですかね、山科さん。

 「そうね、この道を歩くのは気持ちがいいわ」

 「まあ、俺も平気だけどね。ちょっと喉が渇いたなと思ってね」

 「そこに川が流れるじゃないの」

 「まさかと思うが」

 「手っ取り早く水分補給できそうよ」

 「そうですね」

 二人して笑っている。山科さんも浅川の味方か。まあいい。自販機を見かけたら何か買っておこう。

 

 「ここです」

 バス通りに戻ってすぐの場所だった。

 通りに面した六階建ての横長のマンション。外観を見る限りは、新しいマンションで、設備も整っていそうに見える。入口の自動ドアを通ると右に管理室があり、左にはポストが並ぶ。据え置き型の宅配ボックスもある。

 「管理人の人は、今はいないの?」

 「前は、平日の昼ならいましたけど、訪問客の対応やセキュリティは機械になっちゃいました。そこの受話器を上げると、管理会社に繋がります」

 「何かあったらすぐに来てくれるのかしら?」

 「2、3分くらいで来てくれます。セキュリティ会社の待機所が近くにあるみたいです」

 「早いわね。それなら安心ね」

 奥にはもう一つドアがあり、こちらはオートロックだ。マンションの住民は顔認証で開くようになっている。訪問客は備え付けのインターホンで訪問先と話し、ドアを開けてから入ることになる。ドアの近くの「録画中」と書かれた防犯カメラも赤いランプがついて、きちんと作動している。